昇進面接では「自主性」「主体性」「積極性」の違いを気にした方がいい
昇進や昇格の面接だけでなく、就職面接などでも、時々気になるのが、「主体性」という言葉と「自主性」や「積極性」という言葉の違いをちゃんと認識していない方がみえます。
例えば、「あなたは、過去にどのような事柄に主体的に取り組み、どのような成果を出しましたか?」という質問に、
「上司から○○という目標を与えられたので、それに取り組んで△△という結果を出しました」
という回答。「違うだろう…」と残念に思っている面接官は自分だけではないはず。
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目次
■自主性と主体性の違い
辞書で引いてみると、これらは以下のように説明されています。
- 積極性
進んで物事を行おうとする性質 - 自主性
自分の判断で行動する態度 - 主体性
自分の意志・判断によって,みずから責任をもって行動する態度や性質。
違いがわかりにくいですね。
「積極性」というのは、言われた仕事に対して言われたように作業することです。「自主性」というのは、言われた仕事に対して、必要なことを自分で判断して行動をすることです。そして「主体性」とは、言われなくても自分で課題を発見してそれに取り組むことです。
つまり、仕事のレベルで言うと
主体性 > 自主性 > 積極性
です。それぞれの行動を例で考えてみましょう。
「積極性のある仕事」というのは、上司に「この半年の売上データをlでデータを集計して」といわれたら「はい!」と答えてその集計して上司の望む期限までに報告することです。
「自主性のある仕事」と言うのは、そのデータを集計するときにかけているデータがあれば補ったり、間違っているデータを取り除いたりして上司の望む集計結果を出すことです。
「主体性のある仕事」というのは、そのデータをみ、売上が下がっていることを発見し、その原因を自分で調べて売上向上活動を同僚とすることです。
なんとなく違いがわかったでしょうか?
で、最初の面接の質問に戻ってみると、面接官は「主体的に取り組みをしたこと」を聞いています。それに対して、「上司から言われたことを言われたようにこなしました」としか答えていません。
もちろん、社員の中には言われたことをいやいややっている人ややらない人もいるので、この人の評価が低いわけではありませんが、質問に答えていないし、そのうえ昇進させる理由が「積極的」だけというのはちょっと違うと思ってしまえるのにもうなずいていただけるかと。
このような回答で昇進できるのは、新人レベル扱いから、中堅レベル扱いになるときくらいで、中堅以上や管理職への登用面接であれば、合格することはまずないと思います(会社や面接官にもよるでしょうけど)。
■成果を出す人の行動のプロセス
基本的に、成果を出す人の条件というのは、状況を見て自ら行動を起こして、状況を本人が望むように変える力を持っている人です。それが成果と認められるのは、会社にとって状況がいい方向に変わった場合に限ります。
もう少し分解して言うと
状況 状況を観測する
↓
認識 課題を認識する
↓
意図 課題に対する意図(あるべき姿)を持つ
↓
判断 課題に対して行動を起こすべきかを判断する
↓
思考 意図から目標を考える
↓
計画 目標を達成する手段を計画化する
↓
行動 計画にそって行動する
↓
新状況 行動した結果変化した状況を観測するために最初に戻る
というプロセスをたどります。
積極性があるというのはこの「行動」に対する姿勢の問題だけですし、自主的というのは、「計画」と「行動」の部分だけについて行動しているだけです。これでは、会社や組織は良くなりません。それは部下や後輩を指導する人について会社が期待する行動でないことは明らかです。
高い成果が出せる人というのは、意識しているかどうかに関わらず、こうした現状認識→課題発見→計画・行動→現状認識という無限ループを回っています。だから他の人にはできないオリジナルな成果が出せるわけで、「言われた目標だけ」に行動が制限されている人に対して、自分で勝手に課題を見つけて解決するのですから、評価が高くなるのも納得なのではないでしょうか。
ちなみに、「自主性があること」だけなら上級レベルの一般職で、管理職への推薦条件は満たしておらず、「自主性」に加えて、
- 視点のレベル
発見・解決しようとする課題が組織・経営に関することであること - 行動のレベル
行動が他人を巻き込んで組織化するものであること - 目標のレベル
組織が自律行動を取れるようにしていること
が必須だと思っています。
最後の「自律行動」の部分はちょっとわかりにくいかもしれないので説明を加えておきます。
一定以上の視点のレベルで発見した問題というのは一時的な活動(行動)だけでなくなるようなものではありません。したがって継続的な改善活動が必要になります。そのときに、発案者である人がいつまでも関わっていては、発案者は次の新しい問題に取り組めません。
したがって、改善する組織を作ったら、その組織が発案者がいなくても改善活動をし続けるような仕掛けを作っておく必要があります。これを「組織の自律性」といいます。
この仕掛けを作ることができるようになれば、管理職としては十分な能力があるといえるでしょう。