Will-Can-Mustフレームワークの嘘
「Will-Can-Must フレームワーク」って聞いたことがありますよね。
もともとはリクルート(株)発祥だとかで、転職なんかでよく聞くお話です。
「やりたいこと」「やれること」「求められること/やらなければならないこと」の3つの円があって、それが全部重なっているところが「あなたの天職」ってやつです。
まあ、言わんとしていることはわかるような気がしますが、転職市場を拡大せんがためって感じがひしひしとしてきて好きじゃない。。…ということで、転職について
そもそも、この3つの丸が重なっている人ってどのくらいいるでしょうか?
■Will-Can-Mustの3つは重ならないし、重なっている
個人的には、「そもそも重ならないんじゃない?」と思っています。
まず「Will」。
これは「意思」です。つまりなにかしたいことではなくて、それをすることによって得られる価値への「欲求」です。
次に「Can」。
これは「できること」です。つまりどのようなことができるのかの「能力」の話です。
最後に、「Must」。
これは、「求められること」です。会社で求められるのは「結果」です。どのように行動するのかという行動自身も含まれることがありますが、常識の範囲内で行動して最終的に求められた結果が出せればオッケー。
つまり、この3つは同じ次元にないのですよ。
極端な言い方をすれば、「仏教徒」と「日本国籍」と「ウオーキングが好き」が3つ揃っていたら幸せになれますよって言っているのと同じ。
「すべてを兼ね備えていようが、全然別物だろうがどうでもいいんじゃないの?」などと思うわけです。
結論。
Will-Can-Mustの3つの丸は別次元のものなので、それが重なっているとか重なっていないとかの話ではなく、どのように自分のやれる方法を考え出して、自分のやりたいことの一分となるように考えることが必要じゃないかと。
■やりたいと思えるようにするには
たとえば、上司から取引先に提出する企画書の作成を頼まれました。ところが、この取引先には企画書はつい最近、企画書を出したばかりです。「もう別の企画書は提出しているのに…」 と思ってしまうと作業が滞ってしまいます。
前向きになれない、ありがちな理由ですね。
これをやりたいと思えるようにするにはどうすればいいでしょうか。
前出の「自分なりに価値ある・意味あるものにする」ということで考えると、たとえばモチベーションの元が、他の人への貢献にある人なら、こんなふうに考えてみてはいかがでしょう。
「若いメンバーでもある程度完成度の高い企画書できるようなひな型を作って、それでみんなに公開したらどうだろう?」
あるいは、作業を楽にすることにモチベーションがあるなら、こんなふうに考えてみてはいかがでしょう。
「パラメータを入れたらそれなりの企画書の本ができあがるようなツールを作ってみたら企画書が量産できないか?」
つまり、その仕事に新たな意味(個人的な目標)を付加することで、「やりたくない」から「やりたい」へシフトできる可能性があります。
上司から求められる結果は、上司の意図した「結果」なのであって、その過程(Can)や、それに対してのモチベーション(Will)ではないので、あなたが、それに対してどのような技術を使おうが、どのようにモチベーションを持とううが、上司には興味もないのです。
前出の例で言えば、上司は「企画書」という結果を求めています。これが Mustです。
あなたは、上司から見ると満点ではないにしろ、取引先の課題を調査できるだけのスキルがあり、それを企画としてまとめるだけのスキルを持っているのです。
だから、それをやることの価値は自分で決めてしまえばいいのです。
あなたの価値観として、同僚や後輩からの感謝が大事なのであれば、その作業するプロセスをたどりながらテンプレートやマニュアルを作って、「実際にこれに従って作った結果がこの企画書だよ」と示せれば、企画書は単なる練習台でしかないでしょう。ただし、結果として企画書はできるのですから文句を言われる筋合いはないし、後輩からは「ありがとう」といってもらえるのではないでしょうか。もちろん、その企画書がショボいものだったらダメですから、しっかりと作り込まないといけません。その作り込みの過程で、「企画書にはどのような考え方が必要なのか」「なにに注意しないといけないのか」はたくさん出てくるでしょう。
「ありがとう」がもらえるのであれば、あなたにはわざわざ時間をとって作業する意味ができてくるのです。
もし、あなたが「上司から高く評価されたい」というところに価値観があるのであれば、「前の企画書よりもっといいものを作ろう」とか「上司がなぜ別の企画書を作れと言ったのかを汲み取って作り直そう」と考えるでしょう。そして、取引先に「良い部下をお持ちですね」と言われるような企画書を作ることに意識を向ければいいのです。
もし、あなたが上司を恨んでいて、足のひとつも引っ張ってやりたいと思っているのであれば、、、(以下自粛)
■どのように意味づけするかは自由
いたってシンプルな発想ですが、このように「どうせやるなら」と自分に投げかけ、その結果が生み出すものを考えていけば、仕事を「自分ごと化」でき、「やらされ感」から脱却できるということです。
Must の中に“価値や意味のあるもの”にを見出すことができれば「やりたい」マインドが生まれ、自走力が高まって楽しさも生まれるというわけです。
■Must に Will を見つける
「やりたくない」から「やりたい」へ変化させるものは、Want にたいして Will の意味付けをすることです。
とある大会社の社長になった方の自伝で、新人で最初に配属された先がシュレッダー室のシュレッダー担当だったという話を記憶しています(出典は失念)。その人がやったのは、シュレッダーが必要な紙を持ち込んできた人に、200%の笑顔で「シュレッダー室へようこそ!!」と声をかけることだったそうです。「人を元気にしたい」その人の価値観がそこにあったのだと書いてあった記憶があります。
そこには、Will-Can-Mustフレームワークなんてどこにもありませんでした。
だから、今転職を考えている人。アドバイザーの言う、Will-Can-Mustなんて気にしなくていいです。この転職をどのように意味づけるかは、あなた次第なのですから。
しつこくやり続けて成功を手に入れている人たちは、このように Must に Will を見つけたからこそ成功したのです。